移住者インタビュー

【後編】移住の“先輩”インタビュー 日々の暮らしの積み重ねが、描いていた家族の未来に近づけてくれた|横山暁一さん・恵理さん(名古屋→長野県塩尻市)

2019年から長野県塩尻市での暮らしをスタートした移住の“先輩”、横山暁一さん・恵理さんご夫妻のインタビュー後編です。塩尻での暮らしにも慣れた頃に、恵理さんは第2子を妊娠。横山家では、塩尻で家を持つための具体的な準備を進めることになりました。当初は新築を想定し、塩尻市内で土地を探していたそうですが、最終的にたどり着いたのは……?
「僕らにとって一番納得のいく形に収まった」と笑顔を見せるおふたりに、塩尻での暮らしを通じて体感したことや家族の変化、「暮らしをつくる」上で大切に思うことなどを聞きました。

新たな土地での暮らしが、夫婦の新たな挑戦のきっかけに

だんだんと育ってきた、地域に対する当事者意識

——家族と一緒の暮らしがスタートし、どんどん塩尻の暮らしがなじんでいく感じがありますね。おふたりが思い描いていた地方での暮らしが実現しているというか。

暁一さん:
コロナ禍になってからは名古屋での仕事をフルリモートに切り替え、暮らしの拠点は塩尻に一本化されました。その後、2022年春に地域おこし協力隊の任期を満了し、そしてダブルワークしていた会社も退職しました。現在は協力隊任期中に立ち上げたNPOを中心に活動しています。と、これまでに起こったことをまとめるとなんだか順序立ててコトを進めている感じがするんですが、実際はそんなことまったくなくて(笑)。それこそ、地域おこし協力隊の3年間の任期を満了したらどうするかなんて、当初は具体的に考えていませんでした。

オンラインコミュニティの様子コロナ禍でスタートした「塩尻CxO Lab」オンラインコミュニティの様子

——もしかしたら、任期満了後に別の土地に移ることだってあり得たかもしれない?

暁一さん:
可能性はゼロではなかったと思います。でも塩尻での暮らしが始まって、仕事を通じて出会った人やご近所さんとの関わりを通じて大事にしたい関係性が生まれて、だんだんと自分も「まちの一員」という意識が芽生えてきたんです。自分が暮らす地域を捉える、解像度が高まったというか、気づけば地域の課題をどうしたら解決に導けるかを、主体的に考えるようになっていました。NPOを立ち上げたのも、自分のノウハウを生かして地域の課題解決に貢献したいと思ったから。じっくり時間をかけて日々の暮らしを積み重ねていったことで、自分の役割を見つけ、「この地に根を張る」と決め切れたんだと思います。

地域おこし協力隊任期中の様子地域おこし協力隊任期中に立ち上げたNPO法人「MEGURU」

——恵理さんは塩尻に移る際にお仕事を辞められたとのことですが、子育てが落ち着いたら再就職なども考えていらっしゃるのですか?

恵理さん:
いずれは作業療法士としてまた働きたいと思っています。でも当面は子どもと向き合う時間を大事にしたいですね。後ろ髪を引かれつつも退職を決意できたのも、子どもと向き合う時間を大事にしたいと思ったからですし。
実は移住してから、私自身にも変化があったんです。じっくり子どもと向き合う中で、子どもにどう育ってほしいか、もっと大きな視点で言えば子どもたちの未来がどんなものになってほしいかを考えるようになって。一念発起してマルシェなどで地域の想いある食べものや製品の販売や、生産者と消費者をつなぐ活動をスタートしました。もともと自分で何かやってみようといったタイプではなかったのですが、きっと夫がいろんな活動に取り組む姿に刺激を受けていたんでしょうね(笑)。小さくても、できる範囲でもアクションすることが大事と思えたのは、夫の影響だと思います。

——移住は、恵理さん自身の人生にも大きく影響したんですね。

恵理さん:
そうだと思います。今取り組んでいる活動は、いわばライフワーク。将来的に作業療法士に復帰したとしても、続けていきたいと思えることを見つけられたのは、私の人生にとってすごく良かったことと感じています。

活動の様子「こどもたちの未来の選択肢を残すきっかけ」をつくりたいとスタートした「Mukuiro(むくいろ)」の活動

家族が増え、より具体的に描きはじめた塩尻でのこれからの暮らし

「理想の住まい」とのめぐり合わせ

——2022年秋には、新たなお住まいに引っ越す予定だそうですね。

暁一さん:
今暮らしている家は賃貸で、2人目の子どもにも恵まれたのもあって、そろそろ家を持とうか、という話になりました。同じ集落内にある古民家を購入し、現在リノベーションしているところです。

——同じ地域なら、環境も大きく変わらないですし安心ですね。

暁一さん:
実は購入した古民家は、前々から妻と「良い佇まいだね」なんて話していた物件なんです。ただ、そんな話をしていた頃は購入可能と知らなくて。あと、当初は新築を検討していたのもあって別の地域で土地を探していたんです。
ただ、2世帯住宅を建てるか、あるいは広い敷地内に家を2軒建てるか検討していたので、ぴったりの土地を探すのにも苦労して……。そんな中で、例の物件が購入できると知って、新築ではなくリノベーションという選択肢が挙がりました。すでに物件探しをスタートして半年程度が経っていて、市内のいろんな地域をめぐったものの理想になかなかたどり着けなくて、家族の中でも「理想ばかり追っていてもしょうがない」という感じになっていて。古民家の風合いを生かせば、新築では生み出せないオリジナリティのある住空間をつくれるのではと期待もできました。何より、同じ地域ならご近所さんとの関係も続きますし、家族みんなにとっても安心です。話し合いの結果、2世帯が暮らせる仕様にリノベーションすることで着地しました。

古民家改装の様子リノベーションは、古民家改装も多く手がけてきた地元工務店に依頼

数年後には、2世帯での暮らしがスタート!

——「2世帯」というワードが出てきましたが……?

暁一さん:
将来的に、僕の両親もこのまちに移住する予定なんです。両親も以前から「老後は自然の多い場所で暮らしたい」と話していたのもあって「塩尻に移住するのはどうか」と提案してみました。僕らにとっても子育てをサポートしてもらえる心強さがありますし、子どもたちからしたら祖父母が身近にいることでより広い世代と関わることになる。僕の両親にとっても老後の生活の安心感が得られる。お互いに安心して暮らせるように、と考えたときに塩尻で一緒に暮らす未来が見えてきました。

——ご両親の移住はいつ頃を予定されているんですか?

暁一さん:
両親が定年退職する3年後を予定しています。定年を迎えるまでの間、今暮らしている場所と塩尻をちょこちょこ行き来してもらって、ご近所付き合いを含めて環境に慣れてもらえたらと思っています。

大きな決断は必要ない。大事なのは、理想と現実をきちんとすり合わせること

移住したからこそ実感できた「生活の豊かさ」

——2拠点生活スタートから現在までを振り返って感じることは何ですか?

恵理さん:
はじめこそ不安がありましたけれど、ここでの暮らしが自分たちに合っていると感じます。自然も近くて、私としては実家とも近い立地ですし。何より、塩尻での暮らしを始めてからいろんなご縁に恵まれてきたと感じますね。

暁一さん:
人や物、土地、いろんな縁がつながって今があると思います。妻の活動のおかげもあって、普段食べているものを「顔の見える関係性」の中で手に入れられる生活を送る中で、いろんな人と関わりながら暮らしているんだと強く感じるようになりました。
この前、子どもが海苔を指して「これ誰(が作った)の?」と聞いてきたんです。子どもにとって、目の前の食べ物は誰かが作ってくれたものであると当たり前に感じてくれているんでしょうね。

インタビュー中の様子「名古屋で暮らしていたときよりも感謝の機会が増え、幸福度が増したと思います」と暁一さん。その言葉に恵理さんも頷きます

僕らにとって「ゆっくりじっくり決めていく」が性に合っていただけ。一歩踏み出す方法は人の数だけある

——おふたりのこれまでの歩みを聞いて、あえて決心しきらずに一歩踏み出すのもアリなのでは、と感じました。

暁一さん:
今はリモート勤務も一般化されつつありますし、2拠点生活を実践する人も増えている印象です。猶予期間がつくりやすいというか、定住すると決めきらないまま段階的に移住するといった、「お試し移住」もしやすくなったのではないでしょうか。

恵理さん:
決めきらずにスタートすることに不安、怖いと感じる人もいると思います。確かに私たちは日々の暮らしを積み重ねて、ゆっくり自然に決心することをやってきましたけれど、塩尻に来た当初は3年後の見通しが立っていない状況に、多少なりとも不安は感じていました。
私たちのように日々の暮らしを通じて人や土地を好きになって、もともとあった不安が自然と解決されるケースもある一方で、逆のパターンもあると思います。

インタビュー中の様子「実際にアクションしてみてはじめて分かることも多いですからね」とおふたり

暁一さん:
移住のための必要なプロセスって、人によって本当に異なるものなんでしょうね。僕らの場合でいえば、良い物件があるとしてもそれだけで移住を決断することはできなかったと思います。
地域おこし協力隊の求人情報を目にしたこと、ダブルワークが実現できたこと、暮らしを通じて地域の良さを実感できたこと、これら一つ一つが僕らにとって移住、そして定住をかなえる上で欠かせないものでした。
振り返ると、理想と現実をどうすり合わせていくか、日々の生活を通じてじっくり考えることが、僕らに合っていたのかなと。良さも大変さもしっかり受け止め、その上で「やっぱりこのまちで暮らしたい」と感じられるのって、とても大事なことだと思います。

移住に迷ったらまずはこれ!
LINEでかんたん移住診断。 何でも聞ける、移住の相談窓口 “スタイルチャット”を覗いてみる
インタビューバナーインタビューバナー
ABOUT ME
移住スタイル編集部
移住スタイル編集メンバーが更新します。移住をこれから検討する方のために、移住に関する、最新情報やノウハウをわかりやすく紹介します!
関連記事
移住に迷ったらまずはこれ!
LINEでかんたん移住診断。